ルカ筆・福音書 5

5
イエスの仲間集め
(マタイ 4:18-22; マルコ 1:16-20)
1ガラリヤ湖――
「おい!押すな!」
誰もがイエスの話す“神の教え”をなるべく近くで聞きたいと押し合う。
2イエスの目には浜辺にある2そうの小舟が映った。どうやら小舟の持ち主である漁師たちは、あみの手入れをしているようだ。
3その内、1そうの持ち主であったシモンと話しをつけた。
うっし、どさっ・・・
その小舟にイエスが乗るとさっそく腰をすえた。何を始めるかと思えば、そこから教え始めたではないか!そう、邪魔されないためにとったイエスの解決策だったのだ。
4イエスが教え終えると――
「シモン!もうちょい沖に出てあみを投げてみな!魚が獲れっぞ!」
5「先生・・・漁師である俺たちが夜通し働いて小魚一匹獲れなかったんでっせ。でもあんたが言うんなら・・・」
6そらよっと・・・ピシャッ
あみは勢いよく広がって沈んでゆく。シモンは慣れた手つきであみを巻き上げる・・・
「!」
「んぐっ・・・!ふんぐぅっ!!・・・ぬぅぅぅ!!!」
あみがはち切れんばかりの大漁だ!!!
7「お、おい!手を貸してくれ!」
そう漁師仲間たちを呼ぶと彼らは急いで応援に来た。
――小舟に分けて水揚げしたが、どちらも獲物えものの重さで沈みそうだ・・・!
8シモン・ペテロはあわててイエスの前にひざまずいた。
「これ以上俺に近づいちゃあいけねぇッ!!!おりゃあダメなやつなんです・・・」
9シモン・ペテロを始め、漁師たちは、度肝どきもを抜かれたのだ。こんなにおびたただしい数の魚が一度に獲れたのは生まれて始めてだ。
10シモンの仕事仲間であるゼベダイの息子・ヤコブとヨハネも開いた口がふさがらない。
「はは、恐れるなッ!魚はこれでしまいだ。これからおまえは、人を引きあげる男に“なる”ッ!!!」
「!」
11彼らは小舟をきしに泊めると、何もかも置いてイエスの後を追った。
重い皮膚病ツァラトの男
(マタイ 8:1-4; マルコ 1:40-45)
12重いやまいにかかった人のいる、とある町にイエスがいた時のこと――
その男がイエスを見るなり、ひたいを地につけ、土下座した。彼の皮膚はまるでブドウの実のようなデキモノだらけ。どうやら重い皮膚病ツァラトにかかっているようだ。
「先生!あなたのお気持ちひとつでおいらのやまいは治ります・・・!!!」
13「あぁ治したいとも!さあ治れッ!」
イエスが彼に触れるとデキモノが嘘のように消え、やまいが治ったではないか!
14「いいか、今起きたことを言いふらすんじゃない。これから祭司に見てもらい、完治の診断書をもらうんだ。済んだら、掟の通り、神にお礼の捧げ物を捧げるんだ!いいな、それらを済ませる前に言いふらすんじゃないぞ!」―― 【聖書:レビ記14:1-32より引用。掟では、皮膚病ツァラトえたかどうか、“祭司が判断するべし”とあったのだ】
15口止めをしても、イエスの名は日に日に知れわたった。噂を聞きつけた人が次々とイエスの教えを聞きに来ては、やまいを治してもらった。
16イエスは、常に人に囲まれていたが、かかさず、しかも頻繁ひんぱんに1人で祈りに出かけたのであった。
屋根をつきぬける友の信仰
(マタイ 9:1-8; マルコ 2:1-12)
17ある日、イエスが人々に教えていた時のこと――
群衆の中には、きれいな身なりが、その存在を際だたせるパリサイ一派と掟の学者たちがいる―― 【掟の学者は、掟を詳細まで考え、徹底的に守ることを重視した人たちで、検事や弁護士と祭司を合わせたような仕事をしている】
どうやら、ガリラヤ地方の町々やユダヤ地方の町々、村々、はたまた、神殿のみやこエルサレムから集まって来たパリサイ一派と掟の学者であった。
彼らが見ている中、イエスは人知を超える力で次々に人を治した。
18その頃――
「はぁはぁ・・・あ、あそこだッ!」
「もうすぐでよくなれっぞッ!」
そこには、体が麻痺まひして寝たきりになった男を布団ふとんに乗せてせっせと運んでいる男たちがいた。イエスが教えていた家に入って、イエスにてもらおうとしていたのだ。
19「すいません!動けない友達がいるんです、通してくださいッ!!」
「頼む!通してくれッ!!!」
「・・・・・・ク、クソォ!こんなに人がいちゃあ、どうやっても入れねぇ」
「絶対に治してやっからな・・・!」
「み、みんな・・・ありがとう・・・」
お目当てのイエスがいる家は人でごった返し。入口が完全に防がれていた。
「ち、ちくしょう・・・こーなったら!」
――よーいしょ!よし、そぉっとだ。
諦める気などその目からは微塵みじんも感じられない。何を思い立ったのか、布団ふとんに乗せた友人をかついで屋根にあがった。
屋根に登ると、今度は他人の家の天井をはぎ始めるではないか!
ガサガサガサ・・・
「ん、ネズミか?」
「お、おい上を見てみろッ!」
中にいた人たちは、イエスの頭上を見ると、男たちが屋根をせっせとはいでいるではないか・・・
大きく開いたのは天井だけでなく家主やぬしの口。男たちは、群衆の中に麻痺まひした友人を布団ふとんごとつり下ろし、イエスの前に置いた。
20イエスは彼らの確信の強さを見ると笑みを浮かべた。
「青年!きみの過ちは赦された・・・!!!」
21「!」――(んな、今こいつ・・・何様だ!過ちを赦す事は神様にしかできないというのに・・・神様への冒涜ぼうとくだ・・・)
掟の学者とパリサイ一派は、耳を疑った。
22イエスは彼らの考えをさっした――
「なぜそうとらえる? 23言うのは簡単だと思ったか?赦されたかどうかなど、分かりっこないと。それならこの動けない男に立って歩けと命じたらどうだ? 24そのとおりになれば、俺、つまり“この人”が、この世で過ちを赦す権力があると認めざるをえない・・・!!!」
「立ち上がれ!布団ふとんをたたんだら、自分の足で帰るんだ」
25その瞬間、麻痺まひした男は群衆の前で立ってみせると、布団ふとんをたたみ始めた。
見ていた人全員の目が点になった。そんな周りの空気を尻目に、彼は布団ふとんひろうと、神を讃えながら帰って行った・・・・・・。
26・・・・・・ウ、ウォォォ・・・!バ、バンザーイ!バンザーイ!!バンザーーイ!!!
誰もが神の力に恐れをなし、絶賛ぜっさんした。
その場にでくわした人たちは、口々に言った。
「今日、偉大な瞬間に立ち会った」
ゴロツキとつく食卓
(マタイ 9:9-13; マルコ 2:13-17)
27この後イエスは外出した――
すると、税務署の前に座っている男に目をつけた。
税金取りのレビだ―― 【税金取りは、ローマ帝国から税金を徴収ちょうしゅうする権限を与えられていた。ローマ帝国に寝返ったユダヤ人として、ユダヤ人にみ嫌われていた】
――「俺について来い!」
28バタンッ・・・
税金取りのレビは即座に何もかも置いてイエスの後について行った!
29レビはイエスと一味を自宅に招き、ご馳走をふるまった。そこには、イエス一味以外に多くの税金取りやその他の悪評高い人たちが席についた。
30それを知ったパリサイ一派と彼らに掟を教えていた指導者がイエスの一味に何かを言っている――
「君たち、気は確かですか?あの税金取りや悪人と飲み食いするなんて・・・」
31ピクピク・・・それはイエスの耳にも入った。
「医者を必要とするのは、健康な人ではなく病人だ。 32俺は正しい人のためではなく、過ちを犯した人たちに生き方を改めたいかを問いに来た・・・!!!」
イエスが直々じきじきに掟の学者の苦情に答えたのだった。
まじわらない古きとあらた
(マタイ 9:14-17; マルコ 2:18-22)
33すると、ある人が言った――
洗礼者バプティストヨハネやパリサイ一派の弟子たちが断食だんじきしておりますが、あなたの弟子はなぜ、いつも飲み食いしているのです?」
34「結婚式の場で花婿はなむこが招待した友人たちに“断食だんじきしろ”とは、言えないだろう。
35だが、式も終われば花婿はなむこは友人の元を離れる。その時になれば、彼らも悲しくて断食だんじきもするさ。
36例えば、古い上着にあいた穴をふさぐ為に新品の上着を切ってふさぐ人はいない。そんなことをしたら、新品の上着が台無しだ。そもそも新しいぬのと古いぬのの相性もよくない。
37また、新しいワインを古い革袋に入れる人なんていない。
んな事したら、発酵はっこう時に発生する圧力に負けて袋が破裂してしまう。ワインがこぼれて、革袋が台無しだ。
38新しいワインは新しい革袋に入れるのがお決まりだ。 39かといって、ビンテージワインで慣らした口は、新しいワインを口にしない。彼らは、『古いままで結構』と言う」

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